サバねこさんへ [猫と戯れてみる]
昨日、妻と私が良く遊んでもらっていた猫が交通事故で亡くなりました。
広い公園にいる野良の綺麗な鯖模様の女の子で、妻と私は「サバねこ」さんと呼んでいました。
妻は毎日、私も休日は毎日公園に行ってはサバねこさんを探して、遊んでもらっていました。
サバねこさんはとても賢い猫で、普段は茂みの中で保護色のように隠れているのですが、私達が行くと甲高い声でにゃあにゃあ鳴きながら出てきて、遊んでくれるのでした。サバねこさんは、寒いときは私達のひざにのって、丸くなって寝ていました。
サバねこさんは、妻にとっても私にとっても特別な猫でした。よくなついてくれて、私達が辛いときには励ましてくれたりもしました。サバねこさんの表情で、感情や言いたいことがお互いに何となく伝わる感じがしました。
妻と私がサバねこさんを探している途中、道路の真ん中ににサバねこさんの亡骸が横たわっているのを見つけました。
最初、寝ているだけではないかと期待したのですが、近づいてみると目が緑銀色に鈍く光っており、出血、失禁などもう息絶えた後の様子でした。
しかし、身体はまだ暖かくて、頭部の外傷以外はめだったケガもなく、綺麗な状態で横たわっていました。事故からまだそんなに時間は経っていないようでした。
妻と私は、妻の車でサバねこさんの亡骸を、小動物の火葬・埋葬をしてくれるセンターに運びました。途中で何回もサバねこさんとお別れをしましたが、次第に手先足先が冷たくなっていきました。お花と猫缶とカリカリを一緒にしてあげました。
妻は生きているうちに車に乗せてあげたかったと言いました。今のところうちで猫は飼えないので、サバねこさんとは公園で会うことしかできませんでした。最初、サバねこさんは車に乗りたがったりしたのですが、家に連れて帰れない私達は、車に乗せてあげることはできませんでした。サバねこさんはとても表情豊かなので、きっと車に乗って外を見たら、にゃあ、にゃあ、と鳴いて喜んでくれただろうと思います。そうしてあげられなかったことがとても悔しくて悲しくなります。
サバねこさんはつい最近出産を済ませたばかりで、このところ赤ちゃんにかかりっきりのようで、あまり会えていませんでした。妻も私も、出産後のサバねこさんとは会っていませんでした。毎日、今日はサバねこさんいるかな、と話して、出産後の再会を楽しみにしていました。元気な顔をみたら、出産と子育て、よく頑張ったね、とほめてあげないとね、と話していました。
それなのに、この別れは辛すぎる。何故サバねこさんが事故で逝ってしまわなければならないのか・・・
もう少し早く探しに行っていれば、もしかしたら助けられたかも知れない。
もっとサバねこさんに遊んでもらいたかった。成長したサバねこさんの子どもを連れてきて紹介して欲しかった。
せめてもう一度、出産後の元気な顔と、かわいい鳴き声を聴きたかった。もう一度、膝にのって丸くなって欲しかった。
妻と私はセンターに亡骸をお願いした後、もう一度公園までもどりました。サバねこさんの亡骸があった場所には、まだ血などの痕が残っていました。私達はその場所をきちんと覚えておくことにしました。
夜、眠れずに横になっていると、雨が降ってきました。比較的強い降りで、明け方までずっと降り続いていました。
私は雨の音を聞きながら、ずっとサバねこさんのことを考えていました。この雨では、サバねこさんの亡骸があった場所の痕はきっと綺麗に流されてしまうでしょう。
昨日のうちに場所を覚えておいて良かった。お花もお供えできます。
雨が降る前にサバねこさんを引き取れて良かった。ふわっふわの毛皮のままで旅立つことができました。
本当は生きているうちに会ってお別れをしたかったけれど、事故後間もなく、身体があたたかくてやわらかい、綺麗な身体のうちに、妻と私が引き取れたのは良かったことなのかもしれません。
野良の子は、かわいがられていても、きちんと埋葬してもらえない、いつ、どこで亡くなったのかを知られない子もたくさんいるのでしょう。サバねこさんはとても賢かったので、もう助からないと分かって私達を呼んでくれたのかも知れません。
おかげで私達は、サバねこさんの命日も分かるし、亡くなった場所も分かります。サバねこさんのためにお花を供えることができます。その場所を通る度にサバねこさんのことを思い出せます。
最後にサバねこさんのためにしてあげられたことが、天国まで送り届けることだったのはとても悲しく、辛いですが、きちんと見送って、お礼も言えたし、お別れの握手もできました。
サバねこさん、きちんと天国まで送り届けたよね。
サバねこさん、これからは何も心配しないで楽しく暮らしてね。いつかまた会おうね。
サバねこさん、大好きだよ。今まで遊んでくれて、本当にありがとう。
サバねこさん、これからも妻と私を見護っていてね。
(サバねこさん 2006年5月6日没 2006年1月21日撮影)